中川李枝子さん作、大村百合子さん絵の「いやいやえん」を読みました。中川さんと大村さんは「ぐりとぐら」でおなじみのコンビ。お二人は姉妹です。
初版は1965年ですが、内容が全然古びていません。保育園でのお話ですが、子どもの世界は全然変わっていないという事なのでしょうね。
- ちゅーりっぷほいくえん
- くじらとり
- ちこちゃん
- やまのこぐちゃん
- おおかみ
- 山のぼり
- いやいやえん
の全7話で構成されています。
「くじらとり」では保育園での船ごっこ遊びが、何の前触れもなく実際の海の上に場面が移ります。たぶん大人は「これは夢なの?現実なの?」と戸惑ってしまうと思うのですが、そのまま話はどんどん進み、最後はくじらを捕まえて保育園に帰ってくるという、何とも摩訶不思議な話になっています。おそらく、子どもたちはこういう夢と現実の境目があやふやな不思議な世界に生きているんでしょうね。
僕はどろんこのしげる君を食べようとする「おおかみ」の話が一番好きです。おおかみは「こうきたなくちゃ、うっかりたべられないぞ。こんなのをたべたら、おなかがいたくなっちゃう。」という事で、しげる君をきれいにしてから食べようと、タオルや石けんを探したり、お湯湧かしたりと大慌てで走り回ります。
「じゃけつ」とか「ぶらっし」など、ちょっと古い感じの表記もいい味を出しています。結構まぬけなおおかみなので、最後に幼稚園児たちに捕まってパトカーで連れて行かれる時には思わず同情してしまいました。
この「いやいやえん」は宮崎駿監督が映画化を希望したけれど叶わなかったため、オリジナルの「崖の上のポニョ」が制作されたと言われています。「崖の上のいやいやえん」というアイデアもあったそうです。それをふまえてポニョを観ると「いやいやえん」の影響がかなり大きいのがわかります。
「いやいやえん」の中の1篇「くじらとり」は宮崎監督によって短編映画が作成されています。これはジブリ美術館だけで観る事ができる作品。
『くじらとり』 – 三鷹の森ジブリ美術館
ちなみにトトロの「さんぽ」の作詞は「いやいやえん」の作者の中川李枝子さん。同じく中川李枝子さんの「そらいろのたね」はジブリが映像化しています。「そらいろのたね」は「ジブリがいっぱいSPECIALショートショート」に収録されています。
と、すごく中川さんとジブリとの縁は深いです。というより宮崎監督が大ファンなんでしょうね。