映画「小さいおうち」を観てきた

小さいおうち

金券ショップで前売り券が800円で売られていたので、ガラガラの映画館を想像していましたが、かなり人は入っていました。ほとんどがご年配の方々。60歳以上の人は前売り券より当日1,000円の方がお得だからあまり前売り券が売れていないのかもしれませんね。

昭和初期に“小さいお家”で起こった恋愛事件がタキの自叙伝という形で語られて行きます。
若い頃のタキは黒木華さん、平成でのタキは倍賞千恵子さん。黒木華さんは『まほろ駅前番外地』の時のそのパワフルな演技に圧倒されましたが、リーガルハイではイマイチ役にはまっていなかったような気がします。今回の笑顔が素敵な地味な女性は上手くはまっていたと思います。岩井俊二監督が「文学的な香りがする女優」と評していますが、今回のような役はピッタリです。

タキの奉公先の小さなお家の女主人、時子(松たか子)とその夫の部下の板倉(吉岡秀隆)との恋愛事件が描かれています。今までの山田監督の作品とは雰囲気が異なっていて、時子が外出から帰宅すると着物の帯の柄の向きが変わっているシーンや、時子の脚をマッサージするシーンなど艶っぽい場面がちょこちょこあります。

公式サイトに、

「この作品は、東京郊外のモダンな家で起きた、ある恋愛事件の秘密を巡る物語が核にあるけれども、そのストーリーの向こうに、あまり見つめられてこなかった当時の小市民家庭の暮らし、戦前から敗戦の時代を描きつつ、更にはその先に、果たして今の日本がどこへ向かっていくのか、というようなことも見えてくる作品にしたい」と撮影前に語った山田監督。

とあるように、“小さいお家”で起こった恋愛事件が物語のベースにありますが、この時代の雰囲気を感じ取る映画なのでしょう。

山田洋次監督は1931年(昭和6年生まれ)、この映画は昭和10年〜20年辺りを描いたものなので、映画に出てくる坊ちゃんとほぼ同じくらい。制作の動機として自分の経験した希有な時代の様子をフィルムに残しておきたいという気持ちが強かったのではないでしょうか。

初めのうちは中国に事業を展開できると楽天的だった人たちが、少しずつ戦争の渦に巻き込まれて行く様はあまりにも淡々としていて恐ろしくもありました。

映画全体に流れる昭和モダンな雰囲気と、その時代に生きた静かな日本人がとても印象的な映画でした。

ちなみに舞台となる小さいお家は大田区(この時代は大森区)の雪ヶ谷にあったという設定のようです。板倉が下宿しているのは長原。どうやら山田洋次監督はこの辺りに住んでおられた事があったようで、映画『おとうと』にも雪ヶ谷がロケ地としてでてきます。

寅さんファンとしては、倍賞千恵子さんと吉岡秀隆さんが出演されているのも嬉しかったですね。ただ、登場する時代が違うので共演シーンがないのが残念な所です。

山田洋次監督最新作『小さいおうち』2014年1月25日ロードショー!

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